住まいの実例100Life

緑と旅先の思い出に満ちた家

木造一戸建て

緑と旅先の思い出に満ちた家

建築家 故・永田昌民さんの自邸を訪ねて

建物名:
木造一戸建て(建築家と建てる家)
場 所:
東京都東久留米市
住い手:
永田邸

Life

 今回ご紹介するのは、建築家・故・永田昌民さんの自邸。相羽建設が土地探しから携わり、2004年に竣工しました。現在は奥様の佑子さんが、大好きな植物の手入れを楽しみながらお住まいです。15年以上お住まいでも新たな発見があるという永田邸。住み心地や昌民さんのエピソードなどを伺いました。

ストーリー

今回ご紹介するのは、建築家・故・永田昌民さんの自邸。相羽建設が土地探しから携わり、2004年に竣工しました。現在は奥様の佑子さんが、大好きな植物の手入れを楽しみながらお住まいです。個室や浴室の窓からも見え、心癒してくれる豊かな緑。植栽は、造園家の田瀬理夫さんに依頼しました。30年ほど住んでいた以前の家のお庭から、お気に入りのヤマボウシ、そして植物の生えている地表を剥ぎとり「地面ごとお引っ越しした感じです」と振り返る佑子さん。「田瀬さんに全てお任せしたのですが、好きな植物がたくさん入っていて」と微笑みます。旗竿敷地を活かしたアプローチからデッキがあるお庭まで、品種を数えると198種もあったそう。植物の影が壁をスクリーンにして映ったり、秋には紅葉に反射した陽が入り、白い壁が一面淡いピンクに色づいたり…。日々表情を変える植物のお陰で、15年以上お住まいでも新たな発見があるという永田邸。住み心地や昌民さんのエピソードなどを伺いました。

大勢でも心地よく 過ごせるLDK

「永田は家に人を呼ぶのが好きでね」と佑子さん。玄関を上がると、大きな窓が開放的で大勢が寛げるLDKが広がります。ガラス戸を開け放つと、LDKとデッキ・お庭とがひと続きになり、より伸びやかに。大勢のときは椅子を出してもてなしていたそう。「大きなテーブルがあればいい」。昌民さんがそう仰っていたように、来客と食卓を囲んだり作業したりと、柔軟に使える2枚板のダイニングテーブルが空間に一層の大らかさをもたらしています。設計に関して佑子さんに伺うと「何も聞かれないまま図面ができていて」と笑います。それでも足の不自由な佑子さんのお母様のために1階納戸をトイレに変更するなど、佑子さんへの思いやりが表れています。旅行好きで、よく旅先の骨董屋で買い物をしていたご夫妻。ソファ横の飾り棚には、買い求めた小物を年に5、6回入れ替えて並べ、季節感を取り入れています。「旅行から帰ると、やっぱり家がいいって思うんです」と佑子さん。大好きな植物に囲まれ、落ち着き、のんびりできる自宅が佑子さんの元気の源です。

木曾三岳奥村設計所のダイニングテーブルと「はんぺんチェア」は以前の家から約50年も愛用。昌民さんの恩師・吉村順三さんの「たためる椅子」の赤がアクセントに。
木曾三岳奥村設計所のダイニングテーブルと「はんぺんチェア」は以前の家から約50年も愛用。昌民さんの恩師・吉村順三さんの「たためる椅子」の赤がアクセントに。
視線が抜ける壁が緩く空間を仕切ります。
視線が抜ける壁が緩く空間を仕切ります。
テレビ正面のソファが昌民さんの定位置。
テレビ正面のソファが昌民さんの定位置。
玄関とLDKとを仕切るガラス戸。娘さんと一緒に模様を貼った力作です。
玄関とLDKとを仕切るガラス戸。娘さんと一緒に模様を貼った力作です。

コンパクトでも 開放的な2階

■コンパクトでも 開放的な2階■

 

2階は水廻りとふたつの個室。昌民さんの書斎がそのまま残っています。限られた面積でも視線が窓の外へ抜けて明るく、「狭苦しい所がないでしょ?」と佑子さん。天井裏など収納が充実し、可愛らしい籠などが物入れになっているのも空間をすっきり見せるポイントです。

寝室の一角が昌民さんの書斎。
寝室の一角が昌民さんの書斎。
旅先で購入したトランクやハンモックを収納に。
旅先で購入したトランクやハンモックを収納に。
階段周りにも収納を設け空間を有効活用。
階段周りにも収納を設け空間を有効活用。
もうひとつの個室は現在、佑子さんの作業スペース。
もうひとつの個室は現在、佑子さんの作業スペース。

■エネルギーを分けてくれる緑■

 

 気持ちのいい時期には、デッキに椅子を出してお庭の植物を眺めるという佑子さん。生き生きとした姿から活力を貰えるそう。そして緑に包まれるようなアプローチも魅力的。永田邸見学に訪れた設計依頼者が、あえて旗竿敷地を探したというエピソードを教えてくださいました。

窓辺に佇む佑子さん。窓を開けると心地よい風が抜けます。
窓辺に佇む佑子さん。窓を開けると心地よい風が抜けます。
植栽をデッキと同じ高さに持ち上げることで、室内との一体感を増しています。
植栽をデッキと同じ高さに持ち上げることで、室内との一体感を増しています。
アプローチは緑のトンネルのよう。
アプローチは緑のトンネルのよう。

取材後記

初夏にお邪魔しましたが、風が涼を運び、窓の外の緑が爽やかな永田邸。初めて訪れるのに居心地がよく、また佑子さんの植物愛溢れるお話や旅先の思い出も興味深く、つい長居してしまいました。貴重なお時間をありがとうございました!
(記:ライター大川)

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