100人の言葉100People
現場の職人
技術だけでなく人間としても成長できる、仲間と共に歩む大工への道
相羽建設初の社員大工として入社して今年で5年目になる、二人の若手大工の想い。
- 話し手:
- 相羽建設 社員大工
長井駿さん・加瀬彰一さん - 建物名:
- AIBAワークス(加工場)
- 場 所:
- 東京都東村山市
People
私たちが安心して暮らせる「住まい」は、大工さんをはじめ多くの職人さんの手によってつくられています。そんな中、1980年に93万人いた大工さんは、2015年には35万人へ。さらに2020年には30万人、2030年には20万人へと減少するといわれています。
そこで、たくさんの人々の家づくりを支えるべく「若手大工を育てていこう」という想いのもと、相羽建設では「社員大工」制度を導入しています。
工業高校からインターンシップを経て2015年に相羽建設初の社員大工として入社した、長井駿さんと加瀬彰一さん。今年で5年目になる二人の若手大工に、広報の吉川がインタビューしました。
大工を目指すきっかけ
吉川
今日は相羽建設社員大工のエース、長井さんと加瀬さんにお話をお聞きしたいと思います。
長井・加瀬
よろしくお願いします!
吉川
まずはじめに、なぜ二人は大工を目指そうと思ったのかな?
長井
一番は“モノで残る”っていうことかな。地図にも残るじゃないですか。「これが自分が建てた家だぞ」って自慢にもなるし。
加瀬
自分の場合は、単純に「かっこいい」から。小学生時代、畑ばかりだった学校のまわりにどんどん家が建てられて、上棟や屋根に上がって仕事している大工を見てかっこいいな!って思ったんです。卒業式では「将来の夢は大工になることです」って宣言しました。
吉川
二人とも夢が実現しているんだね!ちなみに、何がきっかけで相羽建設に入社しようと思ったの?
加瀬
自分は運命で(笑)。高校ではじめてのインターンシップ先が相羽建設だったんです。みんなフレンドリーだし、職人も若い人が多かったので、馴染みやすいなっていうのが第一印象でした。
長井
俺は別の工務店にインターンシップに行きました。最初は緊張していたこともあるけど、歳が近い人がいなかったのであまり話ができなくて・・・。そのあと相羽建設に行ったら若い人が多くて話しやすかったのは大きいです。今となれば50くらい歳の差がある親方とも、いろいろ冗談を言い合える仲なんですけどね(笑)。
吉川
たしかに最初は緊張するよね・・・!
ところで長井君と加瀬君は高校の頃から一緒だったのかな?
長井・加瀬
はい!高校で3年間、大工になって5年間で合わせて8年間ずっと一緒です。
吉川
それはとても心強いね!
大工という仕事をはじめて・・・
吉川
では、二人が仕事をはじめた当初に感じたこと(面白かったことや、大変だったこと)を教えてください。
長井
仕事をはじめた頃はまだ筋力や体力が無かったので、重い物が持てなかったです。家の材料ってすごく重い。
あと、本当に何にも分からない状態でした。親方に「〇〇(道具や材料の名前)持ってきて」って言われてもそれが何なのかが全然分からなくて・・・。
加瀬
そうそう、「インニッサン」って何ですか?「まばしら」って何ですか?みたいな状態。
長井
自分は不器用なので、最初の頃は正直なところ「大工に向いてないな」って思ってて。
でも大工という仕事はやらないと分からないし、やって気付く事が多いので、経験を積んできてる今が楽しいから、やり続けて良かったなと思います。
吉川
なるほど、自分の成長を楽しめるってすごく大事だね。
加瀬
自分もはじめた当初は何もわからなかったです。長井と同じように、物の名前を憶えるのが大変でしたね。「尺」なんて使ったことないし、本当にゼロからのスタート。まずは名前を憶えることを頑張りました。
吉川
ちなみに、どうやって名前を憶えていったの?
加瀬
人に聞いたり、トイレに行ったときにささっとネットで調べたりとか(笑)
長井
入社してから2年間は大工学校(東京建築カレッジ)にも通っていたんですけど、同期もみんなゼロスタートの仲間でフラットな関係だったので、わからないことはみんなで相談したり、先生にも聞けたり。そんな環境があったのは大きかったです。
もちろん親方から教わることもたくさんあるんですが、忙しい親方に全部聞くのは申し訳なかったので。
吉川
基本的なことは、学校の友達や先生に聞いて習得してきたんだね。
長井
はい。みんな同じレベルなので、「これわからないなー」って言いながら、わからないなりにやってみて、つくりあげていく工程が面白かったです。
吉川
大工学校で「良かったな」っていう出来事は?
加瀬
勉強はまあともかく(笑)、横のつながりができたのが良かったです。付き合いが広がって仲間が増えたのが一番大きいですね。
長井
あとは、墨付けや加工ができること。今はだいたいの作業が機械プレカットですけど、学校では手作業でカンナとかノミしか使えなかったので、昔ながらの技術を学べるのが面白かったです。
それと、2年生になると大工以外にも電気・水道・左官・塗装とか、違う分野も全部教わるんです。そういうのを一通りやると大工の仕事だけじゃなく、次に現場に入る職人さんのことも考えられるようになって。「これやったら電気屋さん嫌がるだろうな」とか、そういうのを感じられるようになりました。
吉川
家づくりっていろんな職人さんが出入りするから、お互い思いやりを持って仕事をすることは大切だよね。
経験を重ねたからこそ感じること
吉川
では、今年で5年目になって後輩もできた二人ですが、今仕事に対して感じていることを教えてください。
長井
やっぱり自分が本当にでかくならないと、後輩はついていけないなって。別に舐められはしないけれど、そういう存在になってはいけないし、頼れる存在にならなくてはいけない。そのためには自分が仕事の量をどんどんこなして覚えないといけないし・・・。
大工をやっていると、いろんなことを感じられます。大工として、ただ技術が向上するだけじゃなく人間性として成長できるというか。
吉川
モノをつくっていればそれ良し!というわけじゃないんだね。確かに大工さんっていろんな人と関わる仕事だもんね。
加瀬
できることが増えて、名前も憶えられるようになって、今は「自分の仕事が人の生活に関わるものだ」っていう自覚が芽生えたり、生活をつくる手助けになっていることを実感しています。
長井
考え方は一年目から変わったよね。
加瀬
うん変わったね!「家を建ててる」っていう感じがある。
最初の頃は言われたことをひたすらこなすだけで精一杯だったけど。
長井
「家をつくる」ってお客さんの一生の買い物だってつくづく感じて。
吉川
それはどんなときに感じたの?
加瀬
仕上げ工事をやらせてもらうことが増えてきたので、自分でやった仕事がそのままお施主さんに見えるようになったからっていうのは大きいです。階段をつくっている時も、「やっぱりもうちょっとボンドつけた方が良いかな」とか、「足で踏んだ時に鳴ったりしたら気になるよなぁ」とか。1~2年目は壁の中とか天井の中の下地とか目に見えない部分ばっかりだったので。
長井
できることが増えたからこそ、「中途半端な仕事していてはいけないな」っていう責任感が増しました。
お施主さんからそういう話を頂く機会はあまりないので、「もし自分だったら・・・」って想像するようになって。
加瀬
もし建売住宅しかつくっていなかったら、そういうのは感じなかったかもしれません。相羽建設で建てる家はお施主さんがいるし、顔が見えるから。
長井
上棟式もやったり、時々お施主さんも現場に見に来て「もうこんなにできているんだ!」ってすごい喜んでくれるんですよね。そういうのを見ると自分達も嬉しいし、中途半端な仕事ではやれないなって。
吉川
お互いの顔が見えると仕事へのやりがいも生まれるし、頑張ってくれている職人さんたちが見えるとお施主さんも安心だよね。
「アイドル大工」プロジェクト
吉川
では、次の質問。
長井さんが最近立ち上げたという「アイドル大工」プロジェクトについて、ぜひ詳しく知りたいです。
長井
自分たちはモノをつくることしかできないし、つくってるモノはその家のお施主さんにしか見えないので、せっかくならそれをいろんな人に見てもらいって思ったんです。そこで影響力があって全世界に発表できるインスタグラム(@kasyudaiku)で発信をはじめました。
長井
モノをつくるにあたって一番重要なことは「目を引き付けること」だと思ったので、そこで、よくある「#大工」というハッシュタグじゃなくて「#アイドル大工」として発信することにしました。
正直なところ思いっきりふざけたネーミングだし、アイドルになる気も全然なくて(笑)。でも、「こいつらなにやっているんだ?」ってそれだけでも目を引くし興味を持ってもらえるんじゃないかなって。そんなインパクト重視で名前をつけました。
吉川
「アイドル大工」、私はとても良いと思うなぁ!
インスタグラムの反応はどんな感じかな?
長井
最近発信を続けていたら、少子化の影響で若手職人が少なくなっている現状から建設業界を盛り上げよう!という団体『建設workersUnion(@kensetsu_worker)』にフォローされたんです。どうやったら若い人たちに「大工になりたい」って感じてもらえるかを発信しているグループで、そんな活動をしている人たちがいるんだって知って、自分たちも建設業を盛り上げていきたいという想いが芽生えたんです。
吉川
全国に同じ想いをもって活動している仲間がいるんだね。
これから「アイドル大工」プロジェクトをどう広めていきたいですか?
長井
今は正直フォロワーが超少ない!と思っていて。全世界と比べたらこれっぽっちもいないので、もっと影響力を持って「こんなことやっているんだよって」たくさんの人に知ってもらいたいんです。
そのためにまずはどうやったらフォロワーが増えるかを考えています。目標は来年には1,000人、いつかは東京で一番になる事と、『建設workersUnion』というグループを建設業全体に認知されるまでやり続けたいですね。
これから大工を目指す人たちへ
吉川
最後に、今いる後輩やこれから大工を目指そうとしている人たちに向けてのメッセージはありますか?
加瀬
建築関係じゃない人たちから見ると「大工」ってみんな同じに見えるかもしれない。
でも相羽建設の家はプレカットされた材料を単純に組み立てていくような家づくりじゃなくて、しっかりと大工の手仕事でつくられているということを知ってもらえたら嬉しいです。
例えば自分たちで木を加工してキッチンや階段を造作するし、大工は大工でも一味違った大工仕事をしているんだっていう視点で見てもらえるといいなって。
そんな家づくりに興味があったり、やりたいって人がいたら大歓迎です。
長井
正直なことを言えば、夏は暑いし冬は寒い!最初の3年間は辛いことの方が多いです。一番最初の「なりたい!」っていう気持ちが本当に強くないと大工をやるのは難しいと思います。
でも俺も重い物が持てなかったし、不器用って言ってたけど、やれば自分の実にもなるし大工って技術が身につけられればどこでも通用するので。
加瀬
ここでの仕事を覚えれば、他でも通用するって親方たちもみんな言っているので。辛いことも多いけど、ここで学べることもすごく多いです。
長井
「相羽建設に入りたい」って言ってくれたら、今は自分達含めて社員大工が5人いるし、みんな若い世代だから相談したりコミュニケーションもとりやすいと思います。
加瀬
自分たちが入社した時も、30代の若い職人がいて話しやすくていいなって思ったから。自分より年下の若い人たちも、近い世代がいることに安心感を覚えてくれるんじゃないかな。
長井
大工をやりたいけど「相談し合える仲間が近くにいなくて辛い」っていう話を周りでよく聞きます。自分たちも若い人たちが居やすい環境をみんなでつくっていけたらなって思います。
吉川
暑い・寒いみたいな外的環境はもちろんだけど、人とのかかわりも大きいんだね。
今日は長井さんと加瀬さんの大工へ想いを聞くことができて、ますます応援したくなりました。頼もしい二人に今後も期待しています。
ありがとうございました!
長井・加瀬
はい!がんばります!
ありがとうございました!
Movie
大工の手をつくる|相羽建設株式会社 社員大工
相羽建設の加瀬彰一大工と長井駿大工。社員大工の二人がつくる「大工の手」の製作風景です。
●KM .27 / ita-kumi low table A
Size:high w1185×d450×h340|low w1120×d450×h240
デザイン:小泉誠+Koizumi studio
製 作:相羽建設株式会社+大工
AIBAワークス建物写真:渡辺慎一
取材後記
長井さんと加瀬さんの入社以降、相羽建設には毎年社員大工さんが入社しています。
現場で日々技術を磨きつつ、時には後輩の相談を聞いたりアドバイスしたり……と、いろんな場面で活躍する二人。若い人たちが憧れるような建築業界を目指して、私自身も一緒に魅力を伝えていきたいなと思いました。(広報部 吉川)
話し手プロフィール
相羽建設 社員大工
長井 駿さん
相羽建設はじめての社員大工として2015年4月に入社。
好きなバンドはONE OK ROCK。
相羽建設 社員大工
加瀬 彰一さん
相羽建設はじめての社員大工として2015年4月に入社。
趣味は映画鑑賞やバイクカスタム。