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自然が好き。そんな自身の中にある本質に気づき、いまも大地に絵を描きつづけている造園家の小林賢二さん

造園家

自然が好き。そんな自身の中にある本質に気づき、いまも大地に絵を描きつづけている造園家の小林賢二さん

建築、インテリアの仕事に携わる中、徐々に植物と自身の相性の良さに気が付き、ランドスケープの世界へ

話し手:

小林賢二さん|造園家
建物名:
小林賢二アトリエ
場 所:
東京都国立市

People

東京都国立市で「小林賢二アトリエ」を主宰する小林賢二さん。
大学で建築を専攻し、剣持デザイン研究所にてインテリアデザインに携わり、その後、中東・ヨーロッパへの旅をきっかけに時を経ても残る屋外の空間に魅了され、やがて庭造りへ取り組むように。現在は、商業施設、集合住宅、個人住宅などで、石と植物の織り成す庭づくりを提案しています。相羽建設のつむじの庭は小林さんによるデザイン。

相羽建設との出会い

「最初のきっかけは同じ国立市にアトリエとお店を構える、家具デザイナーの小泉誠さんとの出会いでした」と語る小林さん。

小林さんのアトリエ前をよく通っていた小泉さんがアトリエの庭を気に入り、小林さんに声を掛け、その後、小泉さんが設計した住宅の造園を小林さんが手がける機会がありました。

その頃、相羽建設のつむじモデルハウスでも計画がスタートしていました。
計画当初からつむじのデザインを行っていた小泉さんより、造園デザインは同じ地域(東京の多摩地域という意味で)の造園家さんにお願いしようと小林さんをご紹介頂いたことから、相羽建設とのつながりが生まれました。

小林賢二アトリエの植栽
小林賢二アトリエの植栽
つむじ(舎庫)の庭風景©西川公朗
つむじ(舎庫)の庭風景

屋外の風景への想いはエジプトでのある出会いから

建築やインテリアデザインに携わっているころ、コンクリートやアスファルトなどがどうしても好きになれなかったという小林さん。ある時友人からの誘いで中東、ヨーロッパへ半年間の旅に出ました。そこで出会ったのが4000年前からあるという石の遺跡や、中世から残っている街並だったといいます。

「インテリアの消費のスピードに比べて、自然の材料だけで作られている長く残る形や空間に惹かれました。この出会いがその後の自分の活動に大きく影響しているんです」と話してくださいました。

帰国後、インテリアからランドスケープへと活動の拠点を移し、少しずつ植物との付き合いがはじまったのです。

旅先で訪れた海外建築の写真フィルム
旅先で訪れた海外建築の写真フィルム

住宅の庭づくりの魅力

住宅に力を注いでいったきっかけは、あるお施主様とのお仕事から。

打ち合わせの日、お施主様の手には3冊ほどの植栽の本が抱えられていました。
「こういう木を植えたい、こんなことはできるだろうか」――そんなお施主様からの相談は、小林さんが設計をはじめたころの興味にとても似ていたそうです。

「あーだこーだと植栽の打合せをして、お施主様から『楽しかった』という言葉を聞き、とてもうれしかったのをおぼえています。その時の気持ちは現在も常に感じており、それが住宅の庭づくりへ力を注いでいったきっかけでした」と小林さん。

小林さんの庭づくりとこれから

自身の庭づくりの象徴は「光」。植物があることで、葉や枝にあたる朝日や夕陽、それ以外にも時間や季節によって様々な光を感じることができる。それだけで庭の前を通る人が感じる印象、窓に目を向けた時の景色は変わる。

そんな造園という仕事を「大地に絵を描く仕事」とも小林さんは語ります。石の配り方や、木々の大きな構成はもちろんですが、下草のちょっとした植え方の違いなど、小さなことの積み重ねでも庭の印象は大きく変わってきます。

ライフワークとして取り組む陶芸について「庭の風景や街の風景をつくるように、テーブルの上の風景もつくりたいとぼんやり考えていたのかもしれない。いや、そんなことはないかも」と笑いながら話してくださいました。

光がやさしくさしこむ窓辺の様子
光がやさしくさしこむ窓辺の様子
手びねりの器
手びねりの器

小林賢二さんと相羽建設の協働

トトロの森を望む家(東京都東村山市 N邸|2016年)
トトロの森を望む家(東京都東村山市 N邸|2016年)
つむじ(東京都東村山市|2015年)
つむじ(東京都東村山市|2015年)

取材:設計部 中村健一郎
写真:西川公朗(一部)

取材後記

小林さんとは何度か一緒にお仕事をさせて頂いたり、僕自身も国立市在住ということもあって、とても親しみを感じています。
造園家さんというとちょっと敷居の高い感じがしますが、小林さんはとても気さくな方なので、楽しく相談しながら一緒に庭づくりを楽しめるかと思います。カチっときれいに整えられた庭ではなく、身近にあるような雑木の植物を使った自然体な庭。植栽だけでなく石にも詳しく、植物と石をくみあわせた豊かな外部空間の提案をしてくださるのが小林さんの魅力です。

(記:設計部 中村健一郎)

話し手プロフィール

小林賢二

小林賢二アトリエ

小林賢二

1964 長野県上田市生まれ。1986 明治大学工学部建築学科(神代研究室)卒業。1989 桑沢デザイン研究所スペースデザイン科卒業。 剣持デザイン研究所、苑環境計画 勤務。1993 小林賢二アトリエ設立。
ランドスケープデザインや環境アート、彫刻、陶芸など、街や生活空間にさまざまな風景を生み出している。

https://kobayashi-atelier.com/

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