木の家づくり100Taiken

まちづくりは、ひとづくりから・・・

まなぶ

まちづくりは、ひとづくりから・・・

空間ワークショップ|校庭に『まち』をつくろう

体験名:
空間ワークショップ
話し手:
実践女子大学生活科学部生活環境学科建築デザイン研究室 教授
髙田典夫
場 所:
多摩地域の小学校

Taiken

僕たちが実践している「空間ワークショップ」は15年の歴史があり、参加した小学生が1万人を超え、関東地域では地域に密着した建築家の活動として認知されてきています。
この日は多摩地域の小学校の6年生(約60名)と講師の建築家9名、そしてサポート役として地元工務店の相羽建設のみなさんと一緒にワークショップを開催しました。

相羽建設との出会い

数年前から子どものための夏休みイベントをお手伝いしていた東大和市立中央公民館から、「小学生を対象として自然素材を使った工作教室のようなものを出来ないだろうか」と相談を受けました。そこで横浜で工務店をやっていて、地元で似たような活動をしていた大学の後輩に相談したところ、多摩地域で子どもたちを対象として同様の地域活動をされている相羽建設の迎川さんを紹介されて、お会いしました。

いろいろお話を伺って、「こども工務店」などの活動も体験させていただきましたが、地域とともに活動している姿は、子どもたちの教育を学校だけに任せておくのではなく、地域社会がサポートすることで、より効果的になるのではないかという、僕たちの活動にも通じるものを感じました。それ以来、こうした地域向けのワークショップに一緒に参加していただく機会も増えました。

空間ワークショップとは

僕たちが実施している「空間ワークショップ」とは、 2種類の長さ(1,800mmと900mm)の材木とゴムバンドだけを使い、6~10人の子どもたちがグループで協働してアイデアを出し、自分たちが入ることができる「いえ」をつくり、みんなで校庭に「まち」をつくろう というものです。

2種類の長さ(1,800mmと900mm)の材木
2種類の長さ(1,800mmと900mm)の材木
ゴムバンド
ゴムバンド

この活動は、2003年に日本建築家協会[JIA]関東甲信越支部中野地域会で考案され、2003年10月4日に中野まつりの一つのイベント「公園にまちをつくろう!」として初めて実施されました。
その後、2004年8月27日に開催された東京都図画工作研究会城西大会で発表した際に、武蔵野市立の小学校の先生方がこの活動に関心を持ち、授業としての空間ワークショップの可能性について、相談を受け、あらためて授業としての企画を先生方と協議し、2005年11月に武蔵野市立境南小学校、2005年12月に武蔵野市立桜野小学校、2006年3月に武蔵野市立第三小学校で実施された空間ワークショップから「授業としての空間ワークショップ」が始まり、その後それぞれの担当の先生方との討議などを踏まえて現在の方式に収斂してきました。

生徒に説明をする髙田先生
生徒に説明をする髙田先生
木材とゴムバンドだけでかたちをつくる
木材とゴムバンドだけでかたちをつくる

空間ワークショップの愉しさ

自分の背丈よりも大きいものを作るという経験は、少なくとも小学校の授業で体験することはないでしょうし、自分の家の周りで「秘密基地づくり」などをやっている子どもも滅多にいないでしょうから、ほとんどの子どもたちが初めての経験ということになります。それも2種類の材木とゴムバンドだけで・・・

というわけですから、始まりはみんな半信半疑です。それが時間が経つにつれてみんな眼の色が変わってきます。休み時間も忘れて90分間作り続け、それぞれ個性的な「いえ」が建ち並び、あっという間に校庭に楽しそうな「まち」が出現するとともに、満足そうな子どもたちの笑顔が輝きます。

みんなで協力して組み立て、豊かな発想力から様々なかたちが生み出されていきます
みんなで協力して組み立て、豊かな発想力から様々なかたちが生み出されていきます

毎年10~20校でこの空間ワークショップを実施して、すでに15年目に入っていますので、参加した小学生は10,000人を優に超え、少なくとも 1,000軒以上の「いえ」が建ち並んだことになります。この数にもびっくりしますが、それよりもっと驚くことは、同じものができないということです。僕たち建築家はファシリテーターとして助言はしますが、形の誘導はしないようにしていますので、子どもたちのアイデアの賜物ということになります。

子どもたちの 想像力/創造力 恐るべし!

グループ作品1
グループ作品1
グループ作品2
グループ作品2
グループ作品3
グループ作品3

空間ワークショップの今後

この空間ワークショップは、建築の専門家としての建築家がその知識と経験を活かして、直接子どもたちに接し、楽しみながら一緒に学んでいくことが特徴で、小学校の先生方からもそのことが評価されています。毎年続けて実施している中で、そのことに加えて、協力することの大切さ、協力するためのコミュニケーションの取り方も同時に学べることに気がつきました。

私事ですが僕の父は長年小学校の体育の教師をやっていて、後年、大学で体育科の初等科教育法を教えていました。僕が子どもたちとのワークショップを始めたのは、父が亡くなってからですので、父と子どもたちとのことを直接話す機会はありませんでしたが、父の著作を少しずつ読んでいます。その中でちょっと気になった文章がありました。

子どもが体育の授業に何を望んでいるのか、私がこれまで作文を通して知り得た点から言えば、
次の4点に集約できる


1. 精一杯運動させてくれた授業
2. ワザや力を伸ばしてくれた授業
3. 友人と仲良く学習させてくれた授業
4. 何かを新しく発見させてくれた授業
(髙田典衛「授業としての体育」1972、明治図書)


これらは「よい授業」の4原則と呼ばれています。
僕がこれまで空間ワークショップをやりながら感じていたことは、これら「動く楽しさ」「集う楽しさ」「わかる楽しさ」「伸びる楽しさ」の4つの楽しさに集約されます。

このような活動は、現在ではその活動範囲を多摩地区だけでなくその周辺地域に広げて実施しています。地域とともに行う建築・住環境教育は、そこに住むひとを取り巻くいろいろな事象に敏感に反応できる人を育てていくことが必要です。

いろいろな視点で街を見るための基礎知識としての建築・住環境教育は空間ワークショップを通して始まり、15年間の継続的な活動により、徐々にその成果を挙げつつあると感じています。

 
まちづくりは、ひとづくりから・・・

話し手プロフィール

髙田典夫

実践女子大学生活科学部生活環境学科建築デザイン研究室 教授

髙田典夫

アトリエテン 代表
日本建築家協会 [JIA] 関東甲信越支部 空間ワークショップ・フォーラム/三多摩地域会 代表
連絡先|e-mail:takata-norio@jissen.ac.jp/tel. 090-3912-5620

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