住まいの実例100Life
木造一戸建て
木々と共に、まちの景色をつくる家
住み慣れたまちで紡ぐ、新しいのにどこか懐かしい暮らし
- 場 所:
- 東京都世田谷区
- 住い手:
- K邸(ご夫婦)
Life
都心から電車で20分ほど、畑や野菜の無人販売所が点在し、古くからの景色を残す地域にK邸はあります。
取材に伺った9月中旬は、グリーンカーテンをはじめ、庭の緑がもりもりと生い茂っていました。「これでも真夏に比べると葉が落ちたんですよ」と語るのは、今回ご紹介するK邸のご主人です。
住み始めて約1年。以前はご夫婦で戸建て賃貸にお住まいでしたが、10年ほど前から持ち家をつくろうと考えていたといいます。奥様のご実家である長野や山梨、群馬への移住も検討する中で、長年住み慣れた地域で家づくりをされました。
「すぐ近くに相羽建設が建てた家があって、こんな風にまちの景色の一部になれるような家づくりがしたいと思いました」とご主人。
家事や趣味など、生活の中で行っている行動をチャート化したり、旅先やカフェの気に入った空間写真をまとめたノートを作成するなど、お2人らしい暮らしを見つけるところから家づくりがスタートしました。
新しいのにどこか懐かしい家
ご主人が休日にボランティア活動で訪れる民家園の建築や、オモテ・ウラ、ウチ・ソトの役割を持つ日本の住居の空間構成から着想を得て、K邸の1階は仕事場やお客さまを迎える交流の場、2階は寝室や浴室などの生活の場として、空間の役割を決めていきました。
「家の中に空間ごとの役割や間があることで、過ごし方に変化が生まれ、心地よい暮らしをサポートしてくれます」というご主人の言葉通り、空間同士の『間』である玄関アプローチや庭の土間スペースもK邸の見どころです。
庭の土間は、屋外でありながら作業に没頭できるお気に入りの場所のひとつ。民家園での活動である鍛治仕事や、庭のお手入れの際に活用しているそうです。
印象的だったのが、新たな家をつくるにあたり、ご夫妻が設えを一度試作して体感した上で新しい家に落とし込んでいたというエピソード。実寸大のベンチを段ボールでつくったり、プランターボックスを窓辺に設置してみたり、リーズナブルなブラインドを購入して試していたといいます。
「もともと近所に住んでいたことや、以前の家でも、自分たちなりに居心地の良い空間を模索していたので、新しい家に『慣れる』という感覚はほとんどありませんでした。住み始めた時から、なんだかずっとここにいたような懐かしい感覚がありました」とご主人。
家づくりノートやスクラップブックで、設計の松本とイメージを共有しながら家づくりが進んでいきました。
工事中は毎日定点で写真を撮影して、竣工後に動画を作成されたり、現在は家づくりを振り返って本をつくる構想をしているというK様。取材では、完成した家の暮らしぶりだけでなく、家づくり自体を目一杯楽しんでくださった様子をお聞きすることができました。
以前の暮らしとの変化を伺うと、ご夫妻とも家の性能を一番に挙げてくださいました。
「前の家は断熱性・気密性が低く、結露やカビを気にしながら生活していました。今は、ちょっとものを置きっぱなしにしてもカビが生えたりすることはなく、気にすることが減って、気軽に過ごしています」と奥様。
この家に引っ越してから、それまで1匹だった猫が3匹になり、2階の畳のスペースは猫のための空間に。人の居場所だけでなく、猫やものに居場所ができたことも、大きな変化だとお話しいただきました。
緑豊かな庭は、造園家の小林賢二さんのデザイン。
ベースを小林さんに依頼して、ご夫妻で草木を植えられるスペースを確保したり、庭の中央に畑を設けて家庭菜園を楽しんでいるそうです。この土地を購入する前から植わっていた木の一つである梅を使って、奥様がシロップをつくられていました。
「2階の畳スペースははじめは読書のためにつくったものの、今では猫の居場所になりました。思い描いていたことと実際の暮らしは変わることもありますが、どう暮らしたら良いのかこの家から教えてもらう感覚があります」とご主人。
『こうしなければいけない』というしがらみを感じず、ありのまま・自然体でいられる場所を得ることができたといいます。
家づくりをきっかけに生活を振り返り、自然体で暮らしを楽しまれているK様。この家がさらにお二人の暮らしやまちに馴染んで行くのがとても楽しみです。
設計・施工
相羽建設株式会社
担当
設計:松本 翔平
営業:相羽 照美
施工:阪出 拓実
大工:佐久間 實
造園:小林賢二アトリエ
写真・編集:伊藤 夕歩 中村 桃子
仕上
屋根:ガルバリウム鋼板
外壁:そとん壁
内壁:薩摩中霧島壁・月桃紙・さわら板
床:パイン材
天井:月桃紙
敷地面積:177.61㎡(53.73坪)
延床面積:82.80㎡(25坪)