住まいの実例100Life

緑とつながる家と暮らし

建築家と建てる家

緑とつながる家と暮らし

にしお設計室「雑木林の家」

建物名:
木造一戸建て「雑木林の家」(建築家と建てる家)
場 所:
埼玉県所沢市
住い手:
西尾様ご夫妻

Life

今回ご紹介するのはあいらぼ(相羽建設に関わりのある住宅建築家チーム)の一員でもある、にしお設計室の西尾春美さんの事務所兼自邸の『雑木林の家』。ainoha5号の巻頭特集以来、実に11年ぶり(!)のご紹介です。

「ブータンの風景のような、緑に囲まれたのんびりした暮らし」

なんといっても印象的なのは『雑木林の家』という名の通り、土地の半分以上が木々に囲まれた庭であるということ。住み始めてから17年の時を経て、木々は背丈をぐんと伸ばし、緑が折り重なる気持ちいい景色に。その規模はもはや庭というよりも公園や緑地といった方がしっくりときます。

「私たち夫婦は青年海外協力隊でブータンに赴任中に出会いました。理想はブータンのように緑に囲まれたのんびりした暮らし。本当はもっと郊外でもいいなと思っていたのですが通勤も考えて、自然が豊かで都心へアクセスしやすい所沢にしました」(西尾さん)

そして見つけたのは八国山緑地にほど近い85坪を超える傾斜の土地。造成前は”山のよう”でしたが、土地の力を感じ、ぐっと心惹かれたそうです。

築17年を感じさせない綺麗な内装。当初は白く節が目立ったというパインの床材も、飴色に艶めき味わいを増しました。低い座面の椅子とテーブルによって空間がより広くゆったりと感じられます。
築17年を感じさせない綺麗な内装。当初は白く節が目立ったというパインの床材も、飴色に艶めき味わいを増しました。低い座面の椅子とテーブルによって空間がより広くゆったりと感じられます。
2階リビングダイニングより庭を望む。大きな引込み窓は全開にすると庭を切り取る額縁のように。デッキと一体となり、暮らしが外へ拡がっていきます。
2階リビングダイニングより庭を望む。大きな引込み窓は全開にすると庭を切り取る額縁のように。デッキと一体となり、暮らしが外へ拡がっていきます。
壁一面の大きな本棚にはブータンの書籍や民藝、植物の本などがぎっしり。絵になる風景です。ワークスペース、リビング、どちらからも本が近く、読書が身近になるのがいいですね。
壁一面の大きな本棚にはブータンの書籍や民藝、植物の本などがぎっしり。絵になる風景です。ワークスペース、リビング、どちらからも本が近く、読書が身近になるのがいいですね。

「建物は夫婦二人で無駄なく使い切れるコンパクトな大きさにし、それ以外を緑としてこの環境の良さを活かすことを考えて設計しました。実のところ傾斜地の造成や残土処分のコストを考慮した上でのコンパクトさ、というのもあるんですが(笑)」と当時の写真を見ながら、ご夫婦で「懐かしいなぁ」と笑顔で語ってくださいました。

二人並んでもゆとりがあるキッチン。緑を眺められるように設けた窓の枠内にもパイプを渡し、ふきんを干したり、よく使うものを吊るしています。
二人並んでもゆとりがあるキッチン。緑を眺められるように設けた窓の枠内にもパイプを渡し、ふきんを干したり、よく使うものを吊るしています。
天窓によって明るい階段。細工が細かい李朝家具は韓国旅行の際に現地で購入したそう。壁に飾られた仏教画も色鮮やかで素敵です。
天窓によって明るい階段。細工が細かい李朝家具は韓国旅行の際に現地で購入したそう。壁に飾られた仏教画も色鮮やかで素敵です。
ブータンの書籍。「山地が多く自然豊かなブータンの風景に触れたことで傾斜の魅力に気づいたところがありますね」と西尾さん。
ブータンの書籍。「山地が多く自然豊かなブータンの風景に触れたことで傾斜の魅力に気づいたところがありますね」と西尾さん。

築17年とは思えないほど綺麗な室内。その秘訣をお聞きすると「特に気を張って生活をしているわけではないんですよ」と西尾さん。気がついた時にワックスをかけたり、自分達のペースでメンテナンスをしているそうです。広くて維持が大変そうに思える庭も、春先や秋に一気にお手入れをすることで普段は大袈裟に手を加えずとも安定するようにしているとのこと。

「お客様は庭を通って2階のデッキから出入りするので、玄関は家族のみの出入口で勝手口のようです(笑)」と西尾さん。ポーチのベンチは荷物を一旦おいたり、靴を履いたりと重宝しています。
「お客様は庭を通って2階のデッキから出入りするので、玄関は家族のみの出入口で勝手口のようです(笑)」と西尾さん。ポーチのベンチは荷物を一旦おいたり、靴を履いたりと重宝しています。
1階の寝室と畳の客間。普段は間の扉を開けて一室空間に。
1階の寝室と畳の客間。普段は間の扉を開けて一室空間に。
寝室・客間の窓の外に設置した縁側。傾斜地のため庭に接する高さが場所により変わり、色々な角度から緑を楽しめます。
寝室・客間の窓の外に設置した縁側。傾斜地のため庭に接する高さが場所により変わり、色々な角度から緑を楽しめます。

家づくりが終わってから始まる『暮らしづくり』。新築から時を経て改めて考える、自分達らしい家や庭との関わり方、愉しみについて伺いました。

時のうつろいと共に変化していく庭

建築当初の庭の写真を見せていただくと今とはだいぶ違う印象です。DIYで敷いているという枕木の小道や、様々な下草たちは少しずつ手をかけ更新。また周りにお家が建築され、境界に塀が建ったり、窓の向きが気になったりと、環境が変わっていくに伴い、駐車場の向きを変えたり、緩やかな目隠しとしてパーゴラや樹木を増やしたりと、庭に手を加えることによって暮らしの変化に対応しています。目隠しとして建てたパーゴラですが、傾斜地を上下から立体的にみせ、より場の魅力が増したように感じます。

一つの家の庭とは思えない、まるで公園や緑地のような風景。自然豊かな周辺環境を尊重し、「街並みに緑を配る」ような素晴らしい外観です。家の外壁はそとん壁。ノーメンテナンスですが、17年たっても綺麗なままです。
一つの家の庭とは思えない、まるで公園や緑地のような風景。自然豊かな周辺環境を尊重し、「街並みに緑を配る」ような素晴らしい外観です。家の外壁はそとん壁。ノーメンテナンスですが、17年たっても綺麗なままです。
建設前の敷地の様子(2005年)。「自然豊かな周辺環境と緑の力を感じて『ココだ!』と。夫は最初びっくりしてました」と笑う西尾さんです。
建設前の敷地の様子(2005年)。「自然豊かな周辺環境と緑の力を感じて『ココだ!』と。夫は最初びっくりしてました」と笑う西尾さんです。
建築から2年半後の様子(2008年)。駐車場の位置や樹木の構成も今と少し違います。今は見上げるほど大きいカツラの木もまだ2mほどです。
建築から2年半後の様子(2008年)。駐車場の位置や樹木の構成も今と少し違います。今は見上げるほど大きいカツラの木もまだ2mほどです。

近年、西尾さんが庭のデザインにおいて大切にしていることは『建物をプランニングするのと同じように、“ちゃんと使いこなす”、庭が機能する』ことだそう。

「緑が単なる風景としてや、建物を引き立てるだけでなく、人や緑それぞれの居場所を決めてゆくように庭を設計しています。緑をもっと手元で感じてほしいので、庭にふっと出たくなるような、そんな住まいと庭の繋がりのある動線やお手入れしやすい植栽計画を大切にしています」(西尾さん)

中二階のような広々としたデッキスペース。パーゴラによって、囲われたような安心感がある気持ちのいい場所に。リラックススペースとしてだけでなく洗濯ものを干したり庭仕事をしたりとフル活用しています。
中二階のような広々としたデッキスペース。パーゴラによって、囲われたような安心感がある気持ちのいい場所に。リラックススペースとしてだけでなく洗濯ものを干したり庭仕事をしたりとフル活用しています。
庭にはいろんな小道が。地面を覆うたくさんの下草は周辺の八国山などに自生しているものを積極的に取り入れているそう。
庭にはいろんな小道が。地面を覆うたくさんの下草は周辺の八国山などに自生しているものを積極的に取り入れているそう。
秋の紅葉。四季の風景も魅力的。
秋の紅葉。四季の風景も魅力的。
雪景色をリビングの窓から。
雪景色をリビングの窓から。

『場というのは、深く関わりを持ったときに、自分のものになる。それは何でも同じで、庭も日々関わることで自分の庭になる』という建築家の阿部勤さんの言葉が「心にすっと落ちてきた」という西尾さん。17年、『庭のある暮らし』を常に考え、実践してきた西尾さんが今後どのような庭のデザイン、緑との関わり方をみせてくださるのか、とても楽しみです!

にしお設計室主宰・西尾春美さん。 気さくな語り口で時間を忘れて話に聞き入ってしまいます。 西尾さんが案内する相羽建設YouTubeの「雑木林の家」のルームツアー&ガーデンツアーは必見です!
にしお設計室主宰・西尾春美さん。 気さくな語り口で時間を忘れて話に聞き入ってしまいます。 西尾さんが案内する相羽建設YouTubeの「雑木林の家」のルームツアー&ガーデンツアーは必見です!

Movie

【ルームツアー】緑とつながる家と暮らし、雑木林の庭づくり|にしお設計室(建築家の自邸)

「にしお設計室」を主宰する西尾春美さんのご自邸を訪ねます!自然豊かな郊外エリアの土地に出会い、17年前に自宅を建築。傾斜した敷地に広い庭を設けて2階リビングの開口部からは豊かな庭の樹々や周辺の八国山緑地が眺められる素晴らしい環境です。
「家や庭はそこに住み手が関わり続けていくことで自分のものになる」西尾さんが大切にしている想いが表現されたお住まいと庭、ぜひ動画でご覧ください!

【ガーデンツアー】緑とつながる家と暮らし、雑木林の庭づくり|にしお設計室(造園家の庭)

「にしお設計室」を主宰する西尾春美さんのご自邸のお庭をご紹介いただくガーデンツアー!自然豊かな郊外で17年前に自邸を建築し、傾斜敷地に広い庭を設けて庭づくりをされています。雑木林のように豊かで美しい樹木や草花にあふれた素敵なお庭づくりの秘訣をお聞きするとともに、四季折々の植栽の表情もお話しいただきました。
「植物を通して人とのつながりが生まれ、周辺の自然環境とのつながりも植物に教えてもらった」と西尾さん。素晴らしいお庭、ぜひ動画でご覧ください!

「雑木林の家」
設計:にしお設計室 西尾春美
施工:相羽建設 
撮影・編集:伊藤夕歩・吉川碧・猪股恵利子(相羽建設)

住まい手プロフィール

西尾春美

にしお設計室

西尾春美

1960年 東京 練馬区 生まれ
大学卒業後、野沢正光建築工房など設計事務所勤務の間に、JICA 協力隊員としてブータンで伝統様式を踏襲した建築の設計監理に従事。
田中敏溥さんのもと、住宅設計を学び多くの影響を受ける。現在は住宅の設計に加えて個人住宅や施設の造園デザインにも関わっている。

https://www.instagram.com/haruminishio/

戻る

関連リンク

AIBA 100 Story

PAGE TOP