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小泉誠さんが手がける「nonowa国立SOUTH」の環境デザイン

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小泉誠さんが手がける「nonowa国立SOUTH」の環境デザイン

国立市に誕生した新たな交流の場「nonowa国立SOUTH」を訪ねて

体験名:
小泉誠さんによる環境デザインにふれる
話し手:
相羽建設(株)
伊藤夕歩
場 所:
nonowa国立SOUTH(東京都国立市)
設 計:
基本設計:株式会社JR東日本建築設計/実施設計・監理:株式会社大林組一級建築士事務所
施 工:
株式会社大林組 東京本店

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2024年春、国立駅南口にJR東日本グループ初の木造商業ビル「nonowa国立SOUTH」が開業しました。
株式会社JR中央線コミュニティデザインが運営する同施設は、国立の街でくらす人たちへ上質でゆとりあるライフスタイルを提案するショップや企業が入居し、国立の駅舎を行き交う人たちが日々立ち寄り時間を過ごせる素敵な空間になっています。
建物の基本設計は株式会社JR東日本建築設計、実施設計と施工は株式会社大林組。そして共用部の環境デザインに携わったのは国立市を拠点に全国の産地とものづくりをし、活動する家具デザイナーの小泉誠さんです。この「nonowa国立SOUTH」の場づくりに、小泉さんと一緒にものづくりをする全国の産地の仲間と共に、相羽建設も関わらせていただきました。
完成した空間とともに、建築に携わった皆さんのサインづくりの様子をご紹介します。

家具デザイナーの小泉誠さんがつくる環境デザイン

nonowa国立SOUTHのテーマは「ソーシャルグッドリビング」。コロナ禍で私たちの暮らしや働き方、教育の在り方や買い物の仕方にも大きく変化が訪れる中で、nonowa国立SOUTHは「駅」という街の顔となる場で人と人とのリアルなコミュニケーションを生み出し、地球や身体にやさしい商品やサービスを提案・提供しようと取り組んでいます。

国立市を拠点に活動してきた小泉誠さんがこの施設の環境デザイン・サイン計画・アート計画、多摩産材+国産材の活用として取り組む中で、国立市内で伐採されて不要になった桜の木をはじめ、リサイクル比率の高いレンガ調タイル、再生繊維を使ったバナーサインなど、循環型社会に配慮した素材選びや、空間の環境デザインが丁寧に進められてきました。

1階共用通路に設置されたバナーサインの素材には再生ポリエステル繊維が活用されています。©photo : Nacása & Partners Inc.
1階共用通路に設置されたバナーサインの素材には再生ポリエステル繊維が活用されています。

施設内部には建築の構造の木と、それ以外の木の壁面やサインが調和のとれた温もりある空間を演出されています。「木」に深く関わってきた小泉さん。「クライアントであるJR中央コミュニティデザインの皆さん、基本設計の株式会社JR東日本建築設計の皆さん、実施設計+施工の大林組の皆さん、環境デザインチームの皆さんが前向きに協働をし、とても素敵な成果につながった」と話されていました。

周辺の街並みに調和するように用いたレンガ調のタイルにはリサイクル製品である再生タイル(せっ器タイル)が採用されています。©photo : Nacása & Partners Inc.
周辺の街並みに調和するように用いたレンガ調のタイルにはリサイクル製品である再生タイル(せっ器タイル)が採用されています。

国立市の桜のサイン

老朽化のために2023年3月に伐採された国立市役所敷地内の桜の木。それを国立市の厚意によりJR中央線コミュニティデザインが譲り受け、この「nonowa国立SOUTH」の館内サインやトイレ入口扉の取っ手など、随所で活用されています。

多摩産材の壁面に設置されたサインの所々に桜の輪切りがあしらわれています。©photo : Nacása & Partners Inc.
多摩産材の壁面に設置されたサインの所々に桜の輪切りがあしらわれています。
階数表示のサインはワークショップでみんなでつくった木のサイン。 柱・梁の仕上げは多摩産材のクリア塗装仕上げ、その他の壁面は木に白染色で上品な仕上げ©photo : Nacása & Partners Inc.
階数表示のサインはワークショップでみんなでつくった木のサイン。 柱・梁の仕上げは多摩産材のクリア塗装仕上げ、その他の壁面は木に白染色で上品な仕上げ

「日本の木」を壁面にあしらった手洗いの空間

施設の2階のトイレスペースには、日本の木を用いた壁面を眼にすることができます。
小泉誠さんが全国で協働する産地の仲間のもとから、26種の樹種が集結。樹種によって表情や色味もまさに多種多様で、とても楽しく空間を演出しています。

壁面に添えられた紹介パネルには、日本の木を紹介する文章も。
日本の森を映した壁面、ぜひnonowa国立SOUTHで実際にご覧になってください!

「日本の木」

日本は森林率が約7割と国土の2/3が森林で
おおわれている世界有数の森の国です。
森には資源が豊富で、桶、椀、樽・桝など
木偏がついた道具名も多く、日本人が森とともに
暮らしつづけてきたことがうかがえます。
この施設には、多摩の森から運ばれた木がたくさん
使われていますが、この壁面には日本中の木を
集めて日本の森を映してみました。そして
洗面器は滋賀の信楽焼、鏡は岡山の孟宗竹を曲げて、
日本の手仕事で丹念に作られています。

信楽焼の洗面器の黒が空間を引き締めます©photo : Nacása & Partners Inc.
信楽焼の洗面器の黒が空間を引き締めます
孟宗竹を曲げてつくられた鏡にも日本の木が映ります©photo : Nacása & Partners Inc.
孟宗竹を曲げてつくられた鏡にも日本の木が映ります

市民とアート、駅舎の歴史がつながる空間づくり

nonowa no kadoというアートスペースで地元アーティストと市民がつながる場所。多摩産材のベンチも小泉誠さんがデザイン©photo : Nacása & Partners Inc.
nonowa no kadoというアートスペースで地元アーティストと市民がつながる場所。多摩産材のベンチも小泉誠さんがデザイン
写真奥の化粧柱は国立駅の旧駅舎の素材と新たな桧材を伝統的な継手で接合。過去と今がつながる意匠©photo : Koizumi Studio
写真奥の化粧柱は国立駅の旧駅舎の素材と新たな桧材を伝統的な継手で接合。過去と今がつながる意匠

nonowa国立SOUTH|施設概要

©photo : Nacása & Partners Inc.

運  営:株式会社JR中央線コミュニティデザイン
場  所:東京都国立市
主要用途:物販・飲食・サービスなど
階  数:地上4階
構  造:木造(一部鉄骨造)

基 本 設 計:株式会社JR東日本建築設計
実施設計・監理:株式会社大林組 一級建築士事務所
施     工:株式会社大林組 東京本店

環境デザイン:小泉誠+Koizumi Studio

素材協力:
大雪木工(北海道)・登米町森林組合(宮城)・相羽建設(東京)
新井製材所(岐阜)・山長商店(和歌山)・テーブル工房kiki(徳島)

みんなでつくるnonowaのサイン

nonowa国立SOUTHのサインは、小泉誠さんとこのプロジェクトに携わったJR中央線コミュニティデザインの皆さんや大林組の皆さんが一緒にワークショップを通して作り上げたものがあります。
国立市役所の桜が老朽化により伐採され、その桜を活用して、クライアント・設計・環境デザインの皆さんが集まり、ワークショップで施設の階数表示サインを製作しました。

国立市役所の敷地内で老朽化した桜を伐採
国立市役所の敷地内で老朽化した桜を伐採
地域を象徴する桜が、あらたにサインに生まれ変わります
地域を象徴する桜が、あらたにサインに生まれ変わります

相羽建設の加工場で桜の枝を輪切りにして、関係メンバーが階数表示の数字の形に木を並べてサイン制作をに取り組みました。

サインづくりワークショップを準備する小泉誠さんとKoizumiStudio・こいずみ道具店の皆さん
サインづくりワークショップを準備する小泉誠さんとKoizumiStudio・こいずみ道具店の皆さん
国立市役所の敷地の桜の枝から素材を準備
国立市役所の敷地の桜の枝から素材を準備
チームにわかれて桜の木を並べて数字のサインをつくっていきます
チームにわかれて桜の木を並べて数字のサインをつくっていきます
制作途中の様子をみんなで確認しながら詰めていきます
制作途中の様子をみんなで確認しながら詰めていきます
大林組の設計チームの皆さんのサインはさすがの完成度!
大林組の設計チームの皆さんのサインはさすがの完成度!

小泉誠さんが家具デザインを通して協働する全国の産地のメーカーからもそれぞれの地域の木が集まり、新たに誕生する施設に設られる「日本の木」壁面が製作されました。

「日本の木」の壁面の樹種を並べて構成を確認する小泉さん
「日本の木」の壁面の樹種を並べて構成を確認する小泉さん
JR中央線コミュニティデザインの皆さん、大林組の設計者さんと小泉さんと一緒に記念撮影
JR中央線コミュニティデザインの皆さん、大林組の設計者さんと小泉さんと一緒に記念撮影

Movie

「nonowa国立SOUTH」JR東日本グループ初の木造商業ビルの環境デザイン(環境デザイン:小泉誠 実施設計・施工:大林組)

2024年春、JR東日本グループの(株)JR中央線コミュニティデザインが国立駅南口に木造商業ビル「nonowa 国立 SOUTH」を開業しました。
「地球と、地域と、身体に心地よい 『ソーシャルグッドリビング』」をテーマにした、JR東日本グループ初の木造商業ビルは、基本設計を(株)JR東日本建築設計、実施設計・監理・施工を(株)大林組が担い、環境デザインを国立市を拠点とする家具デザイナーの小泉誠さんが担いました。
相羽建設も、館内に設置された桜の木のサインづくりワークショップやトイレスペースの「日本の木」の壁へ素材提供をさせていただいています。
国立らしさを守り、地域の人たちに受け入れられる
次世代型の商業施設をつくるために。
開発には、地域と未来に向けた熱い思いが込められています。

nonowa国立SOUTH
写真:Nacása & Partners Inc.  小泉誠+Koizumi Studio

国立の桜のサインづくりワークショップ
写真:相羽建設(株)広報部

話し手プロフィール

小泉誠

Koizumi Studio

小泉誠

1960年東京生まれ。デザイナー原兆英と原成光に師事。1990年Koizumi Studio設立。
2003年にデザインを伝える場として国立市に「こいずみ道具店」を開設。建築から箸置き
まで生活に関わる全てのデザインを手がけ、現在は日本全国のものづくりの現場を駆け
回り地域との協働を続けている。2015年には「一般社団法人わざわ座」を立ち上げ、
手仕事の復権を目指す活動を開始。
武蔵野美術大学名誉教授・多摩美術大学客員教授・2012年毎日デザイン賞・2015年
日本クラフト展大賞・IF DESIGN AWARD 2023など国内外の受賞多数。

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