穏やかな郊外暮らしが叶う団地リノベーション

「私が幼い頃に通っていた小学校が敷地の裏手にあり、子どもたちの声が聞こえてきたり、まだ私が生まれる前に母が植えた柿の木に小鳥がやってきたり、穏やかな環境が魅力です」と奥様。ご主人はアイルランド出身。ロンドンで生活を共にされていた時期を経て、日本での暮らしがとても気に入っているといいます。「この地域はお気に入りのコーヒー屋さんやパン屋さん、小さな農園など日常を豊かにするお店が揃っています。以前はここから5分ほどのところに住んでいましたが、この家は静かで明るく、ここにいる時間が充実しています」とご主人。終の住処を想定したお二人の住まいと暮らしぶりをご紹介します。
思い出の場所をこれからの暮らしに向けて

現在60代に差し掛かるお二人は、この家を『人生の最後の住処』としてリノベーションに臨みました。間取りは3LDKから1LDKへと大きく変更し、開放的な空間に。建物の両側から光が差し込むため、壁を減らすことで以前よりも室内が明るくなりました。設計の太田さんとの打ち合わせは、お二人のご要望に対して太田さんがより良い提案をすることで、建設的でクリエイティブな時間だったと、ご主人が当時を振り返ります。
この部屋は1階のため、敷地内の木々にはたくさんの鳥が訪れ、窓からその様子を観察することができます。「柿の実を収穫して近所に配ったり、デッキでハーブを栽培したり。土や植物に触れることが楽しいです」と奥様。リノベーション前は、奥様のお父様が暖房を一日中つけっぱなしにするほど寒かったため、断熱材をしっかり入れ窓を交換することで、老後を健康かつ快適に過ごせる環境を整えました。「完全に新しくするのではなく、既存の建物のデザインや、以前から大切にしてきた家具を空間に取り入れています」とご主人。玄関タイルは奥様のご両親が張り替えたものをそのまま残し、お二人が海外生活の中で使っていた思い出の家具、コレクションしてきた絵画や調度品が自然素材の空間と調和しています。奥様が育った思い出の空間を大切にしながら、終の住処としてこれからの暮らしを軽やかかつ上質に過ごすためのリノベーションです。






この家で過ごす時間がもっと好きになる
お二人が驚いていたのは設計と職人の技術の高さ。「玄関やキッチンに設けられた棚の高さが建築の他のラインに合うよう設計されていたり、イケアの収納棚がピッタリ納まるクローゼットに驚きました」とご主人。工事中の印象的なこととして、状況に合わせてミリ単位の調整を行う精度と柔軟さを挙げていただきました。ご主人の日本での暮らしは、引退後の時間を豊かに楽しむ、穏やかで活動的なライフスタイル。保護犬のボランティアを行っており、この団地では犬が飼えないことが唯一残念なのだとか。料理が好きで、新しくなったオープンキッチンで奥様と一緒に料理をしたり、友人を招いて食事の準備をしながら会話を楽しんでいます。
以前はIT関連の仕事をしていたというご主人。今後はAIを活用したホームオートメーションや、お気に入りの音楽を楽しむためのスピーカー、新たなテレビの設置を計画中。トイレなどの設備も高品質な日本製品にこだわったといいます。奥様は、「あまりの居心地の良さに『仕事に行っている場合じゃない!』と感じ、管理職を降りて仕事をセーブすることを決めたんです」と言うので驚きです。これからも家で過ごす時間を楽しみながら、お二人のペースで空間と暮らしを育んでくださることを願っています。







平面図


設計者紹介
相羽建設のメンテナンスリフォーム部門「あいばこ」にて多くのリノベーション設計を担当されている空間翻訳デザイナーの太田礼美(おおたあやみ)さん。
今ある建物の良さを見極め、住まい手さんの暮らしや好みに合わせて、細部にこだわって設計をされています。
あいばこブログにて太田さんのコメントと主に担当物件のご紹介をしております。
ぜひ併せてご覧ください。
あいばこブログ「太田さんのご紹介!」
https://aibaco.jp/blog/blog-10360/

竣工:2025年8月
場所:東京都
築年数:約55年
面積:約70㎡
仕上げ:床/パイン無垢フローリング 壁/珪藻土
断熱:床/スタイロフォーム
壁/ウレタンフォーム 窓/カバー工法
設計:太田礼美
施工:相羽建設株式会社
営業:相羽照美
監督:土屋晃
大工:雨宮義紘
写真:伊藤夕歩・吉川碧
編集:中村桃子




