住まいの実例100Life

木造一戸建て
雑木が囲む半屋外空間を楽しむ暮らし
内と外の中間は、魅力と可能性がいっぱい
- 場 所:
- 埼玉県
- 住い手:
- K邸(ご夫婦・お子様1人)

Life
取材は初夏。スマホのマップを頼りに歩いていくと、水路沿いのけもの道のような細道へ。
進むにつれ、足元には初夏の陽気に映える草花、視線を上げれば、庭木が頭上を覆うように連なった緑のトンネルが迎えてくれる。
まるで物語のワンシーンのような小道を抜けた先、落ち着きある角地に静かに佇むのが、今回ご紹介するK邸です。
お子様が小学校に上がる前に家を建てたいという思いから始まったK様の家づくりですが、土地を決めるまでにはかなり悩まれたそうです。
「以前は中央線沿いの都下に住んでいましたが、勤務先から1時間圏内という条件で、筑波や印西など様々なエリアを検討しました。気になる地域を見つけてはポイントをチェックして点数をつけたりもしましたが、なかなか決めきれませんでしたね」とご主人。
そんな中、並行して進めていた工務店探しで見学に訪れた相羽建設から、現在の土地を紹介されました。
「もともとこの地域には高評価をつけていたんです。特にロケーションの良さが決め手でした」とK様ご夫婦。
家の前をゆったりと流れる水路や遊歩道、そして裏手に広がる緑豊かな公園など、実際に訪れてみると、その言葉に深く頷けるだけの魅力がこの土地には詰まっています。

家づくりの要望として最初に伝えたのは「半屋外空間をつくりたい」ということだったと語るK様ご夫婦。
この魅力的なロケーションの中で目指した【半屋外を楽しむ暮らし】 その見どころやこだわりについてお話を伺いました。
半屋外のテラスが家で過ごす時間をもっと豊かに
「キャンプやアウトドアが特別好きというより、公園でお弁当を広げたり、ただ何気なく外で過ごす時間が好きなんです」と奥様。
そんな思いから、家でも自然を感じながらのびのびと過ごせる空間が欲しいと【半屋外空間】を家づくりのキーコンセプトにしました。
当初はウッドデッキにパーゴラ(藤棚のようなもの)を組み合わせる案も検討したそうですが、近年の厳しい日差しや雨をしっかり遮り、居心地良く永く使えるようにと、屋根・壁に囲まれた空間にしたそう。
囲われながらも3方向に開口を設けることで光や風、景色を感じながら過ごせる、開放感あふれる空間になっています。


テラスのある暮らしについて伺うと「朝起きたらテラスに出るんです。気持ちのいい季節はそのまま朝食もテラスで。夏は子どもがプールで水遊びをしますが、日差しを気にせず過ごせます。休日は七輪で焼き鳥を焼きながらゆっくり過ごしたり、ご近所さんとBBQもしますね」と、楽しそうな過ごし方が次々と出てくるK様。
半屋外空間を自分達らしく使いこなされています。

さらに庭は、造園家・小林賢二さんの作庭。イロハモミジを中心に、様々な植栽がテラスを囲むように配置されています。
「季節を身近に感じられるのがいいですね。テラスからすぐ庭に出られるので、剪定や植え替えも気軽にできます」と笑顔のご主人。
すっかり【庭活】が趣味の一つになったそうです。

家に余白を残して、 これからの楽しみに
K邸で印象的だったのは、窓の存在感です。
どの窓からも柔らかな自然光が差し込み、周囲の緑の風景を絶妙なバランスで切り取っていて、空間に穏やかな空気をもたらしています。
「窓の位置や大きさは、設計の松本さんと時間をかけて検討しました」と語るご主人。
なんと図面をもとにご自身で約20個もの模型を制作されたとのこと。
その熱意と探究心には驚かされますし、建築を専門的に学んでこなかったという話を聞くと、完成度の高さには感動を隠せません。


細部までこだわってつくり込んだ箇所がある一方で、あえて手を加えず【余白】として残した部分もあります。
2階の居室について「階段を上がった瞬間に視界が開けるような、伸びやかな空間にしたかった」とご主人。
そのため竣工時には間仕切りを設けず、大きな空間のままに。
「将来的には子ども部屋と書斎に分ける予定ですが、その仕切り方や広さは娘と相談しながら決めたいですね」と微笑みます。
またキッチンの造作カウンターについても、「いずれハイチェアを置いてカウンターテーブルにするか、収納棚をつくるか、暮らしながら考えたい」とご夫婦。
一つひとつの選択に心を込めながらも、未来のための【余白】を残しておく。
家とともに変化し、成長していく暮らしを楽しもうとする姿勢が伝わってきます。



豊かな半屋外空間を中心に、やわらかな光や心地よい風、季節のうつろいを身近に感じながら、暮らしを丁寧に育てていく。
完成で終わりではなく、その先の変化も楽しむK邸には、ご夫婦らしい、自由でしなやかな暮らしのかたちがありました。




設計・施工
相羽建設株式会社
担当
設計:松本 翔平
営業:遠藤 誠
工事:麻生 莉紗子
大工:中山 善弘・中山 和弘
造園:KOBAYASHI KENJI ATELIER
撮影・取材:伊藤 夕歩 ・猪股 恵利子
仕上
屋根:ガルバリウム鋼板
外壁:ジョリパッド
床:杉板、畳
内壁:月桃紙、薩摩中霧島壁、タイル
敷地面積:141.22㎡(42.63坪)
延床面積:79.48㎡(24.0坪)