住まいの実例100Life
建築家と建てる家
建築家の伊礼智さん設計の「9坪の家」
建築家の伊礼智さんがつくる9坪の家。小さな空間にこめられたたくさんの知恵と工夫。
- 建物名:
- 9坪の家
- 場 所:
- 東京都練馬区
- 住い手:
- Iさん
Life
建築家の伊礼智さんが設計した「9坪の家」。この家は建築面積9坪、延床面積18坪の家。小さな家には、快適に暮らすための知恵がいっぱい詰まっています。濃密な空間を持つ小さな家は実に魅力的です。
住まい手のIさんの言葉でご紹介いただきました。
家づくりのはじまり
2004年の正月、家を建てる目標をたてました。年齢、仕事の状況等私たち自身のことと、土地価格、ローン減税、金利等周辺環境が「今年は家を建てるぞー」と思わせたのでした。
正月に目標を立ててから、分譲マンション、コーポラティブ、そして土地探しといろいろな可能性を探りました。しかし、集合住宅は土いじり(家庭菜園、植木がほしかった)が好きな私達の希望に沿わなかったことと、修繕積立や管理費等があるため意外と希望の物件(価格)に資金が届かないなどネック事項があり、どうせならと一戸建てに集中することとしました。
以前から私がOMソーラーに興味があったのと、妻がナチュラル志向で自然素材に興味を持っていたのとが重なり、相羽建設さんのモデルハウスを見学に行きました。そのとき対応していただいた、誠実でしかも元気で明るい佐々木さんにお話を伺ってからは、ぜひ佐々木さんにお任せしたいと思い、他社は一切考えませんでした。
土地探しからはじまった家づくり
土地探しの最初は小平市周辺で私(夫)一人きりで探していました。妻ははじめあまり夫の決意を本気と思わず、「土地探しも良く続くな」と傍観者でした(妻談)。小平は結婚当初に住んで、環境の良さと意外といい交通の便が気に入っていました。今となっては何物件見たかわかりませんが丸3ヶ月は週末土地を見に行っていました。その中から夫による厳選3物件を夫婦で見に行ったのですが、どうも決定に至りません。その時は30坪ぐらいの土地を探していました。
そんな時、近所(練馬区)のスーパーの中にある不動産屋を買い物ついでにひやかしに(まさか石神井の物件が対象になるとは考えていなかったので)いった時、今のこの土地を紹介してもらったのです。
「ちょっと予算オーバーだしちょっと狭い、風致地区かぁ、壁面後退?でも環境抜群だ」ということで早速スーパーの帰りに土地を見に行き、二人とも大いに気に入り翌日とりあえず仮申し込みに行ったのでした。しかしその後いろいろ調べるとその土地には建坪9坪しか建たないと判明。特に妻は9坪というサイズが実感できず、そんなところに住めるのか不安に感じておりました。
そんな時も佐々木さんに相談に乗っていただき、「私やIさんだから挑戦できる条件です」と背中を押していただき、その後も紆余曲折はありましたが土地の契約に至った次第です。
住まいづくりを経験して
設計に入るまでの約一ヶ月は夫婦で子どもの頃どういう暮らし、住まいだったか、これからどういう暮らしがしたいかということについて、メモをとりながらとことん話し合いました。結婚以来言葉にしたことのない思いをお互いに確認していく作業でした。自分たちがいいと感じるもの、好きなもの、心地いいもの、落ち着くものとは何かを改めて考えました。その中から家のイメージがまとまっていったように思います。
伊礼さんには6月に初めてお会いしました。「やさしそうな方だな」というのが第一印象。今思えばそのやさしさに甘えてこちらの希望ばかりをたくさん伝えていました。特に一ケ月後、模型と図面を見せていただいた時は、ワーッとなってしまい、失礼を顧みずいろいろな希望を言いまくっていたように思います。
図面だけではわからない、すばらしい空間を作っていただき本当に感謝し、そして満足しております。11月に工事が始まるまでの半年間は言葉に表せないくらい、楽しく充実した日々でした。
工事が始まってからは毎週末現場にお邪魔しました。予算の関係もあり、塗装の一部を自分達でやることとなり友人知人のみならず佐々木さんや和田さんにまでご協力いただきました。家づくりをこれまで以上に身近に感じた時間でもありました。ただこの間は追加要望・変更等で、工事が進んでいく中決めなくてはいけない項目も新たに山積し楽しくも忙しい期間でした。
これから住まいづくりを検討している方へ
「こだわり」と「わりきり」が重要だと思っています。特に小さな家の場合、すべての希望をかなえるのは難しい……。うちも駐車場をなくして庭をとることからはじまり、常に「こだわり」と「わりきり」のせめぎあいでした。でもせっかく「私たちの家」を建てるのだから、こだわりをそう簡単にあきらめてはいけません。
また家づくりは気力・体力・行動力とそして何よりも楽しくできるような環境を作ることだと思います。
妻も相羽建設さんの見楽会からはじまりOZONEの講演会、各社ショールーム、はてはガス・電力会社の料理教室まで体験できるものは片っ端から出かけていました。またそこで新しい発見をするのが楽しみのひとつでした。
実際に私達が家に住むのはこれからです。正直言ってこのサイズの家に住み続けられるか不安もあります。これからが住み手の腕のみせどころといったところでしょうか。とにかく身の丈にあった暮らしをしていきたいと思っています。経過は伊礼さんや迎川さんを見習ってブログでもつけていこうかなと考えています。
設計していただいた伊礼さん、森泉さん、営業(当時)の佐々木さんに、現場監督の和田さん、そして大工の高橋さん、相羽社長、迎川常務、この家に関わったすべての方、本当にお世話になりました。
誰が欠けてもこの家はできませんでした。これからはこの9坪の家に入りきれないくらいの皆さんの思いが詰まったこの家を大事に大事にしながら住んでいきたいと思います。これからもよろしくお願いします。
設 計:伊礼智設計室
施 工:相羽建設株式会社
写 真:西川公朗
<建物概要>
面 積:敷地面積 74.84㎡(22.64坪) / 建物延床面積 59.48㎡(18.00坪)
主な仕上:外壁 カラーガルバリウム鋼板小波
内部 壁/エマルションペイント、タイル、シナ
床/パイン材、畳
天井/エマルションペイント
竣 工:2005年4月
*この記事は2005年当時、施主のI様による自邸ご紹介文章を編集・掲載したものです。