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建築家・佐藤重徳さん設計「井の頭の家」

木造一戸建て

建築家・佐藤重徳さん設計「井の頭の家」

建物名:
井の頭の家
場 所:
東京都三鷹市
住い手:
S邸

Life

東京・井の頭公園のほど近く。穏やかな住宅地に佇む『井の頭の家』をご紹介します。

 建主S様の家づくりのきっかけは、徒歩15分ほどに位置する本宅の庭の手入れを依頼していた、造園家・川野邉喜大さん(かわのべ庭園)との縁にありました。川野邉さんを介して建築家の佐藤重徳さんと繋がり、建主・造園家・設計者が最初から一つのチームとなりました。「通常の家づくりでは、建物を建て終えた後に外構や造園を整えますが、井の頭の家はみんなで『楽しい庭を作ろうね、できれば小さな公園のような庭をつくろう』と話し合い、造園家が設計段階でプロジェクトに参画。建築と造園が連携しながら計画が進められたことが特徴です」と佐藤さん。建物と植栽が調和し、季節の移ろいを室内からも感じる住まいが完成しました。
 井の頭の家にはS様の息子さんが暮らします。本宅から夫妻が日常的に訪れるほか、娘さんのリモートワーク拠点として活用したり、札幌で暮らす娘さんご家族が東京へ帰省した際の滞在場所としても利用していると言います。 「一人のための家ではなく、家族みんなのライフステージの変化に柔軟に対応できる家を目指しました」とS様。リビングの中心には直径130cmの特注丸テーブルを配置して、家族全員で食事や会話を楽しめる設計です。2階には大きなデスクを備えたフレキシブルな作業室と和室を備え、大人数の宿泊場所としても機能。家族それぞれ時間を包み込む懐の深さが魅力の住まいです。

緻密な設計による家族の居場所

ハンス・J・ウェグナーのデイベッド・Yチェアは
この家で暮らす息子さんが選んだもの

 S様が「佐藤さんは打合せの鬼ですよ」と語るように、打合せの度に、A2サイズの手描き図面で複数案を提案。メリット・デメリットを丁寧に提示し、納得を積み重ねながら家づくりが進んでいきました。遠方に住む家族がオンラインミーティングや、要望リストを作成して打合せに参加することもあったといいます。「S様とは同世代なので将来のイメージを共有しながら、1階完結動線や階段の両側手すりなど、身体の変化に寄り添う設計を心がけました。『備えること』も仕事だと考えています」と佐藤さん。佐藤さんの代名詞とも言える緻密な手描き図面と丁寧な対話によって、家族の思いが形になりました。

「綺麗なシーンをつくるためにバックヤードを整える」という佐藤さん。
収納たっぷりのキッチンは奥にパントリーも完備
起きた時も庭を望める寝室

 この敷地は、建ぺいや容積率が非常に厳しい法的制限のある地域でした。家族が考える居室スペースの確保が困難な中、佐藤さんが提案したのが、建物全体を『準耐火建築物』仕様とすることでした。 外壁や内装の防火性能を高めることで建ぺい率が拡大。約8畳分もの居住スペースを追加確保することに成功しました。
 将来ご夫妻が高齢になられた場合に備え、1階だけで生活が完結する計画に。ご夫妻が本宅から移動して暮らすことも視野に入れた可変性を備えています。室内は、庭の豊かな緑を絵画のように取り込む計画が魅力です。1階の大きな開口部にはオーダーの木製サッシにガラリ戸を造作で付け加え、プライバシーを守りながらも風を通す、心地よい窓辺をつくり出しています。ダイニングでは、家族が集う丸テーブルを中心に、周囲の動線が計算され、空間に無駄のない美しさと安定感をもたらしています。

川野邉さんによる造園の雑木の庭
小さな家庭菜園物語

 玄関には宅配業者や来客からの視線を遮る小壁を配し、木製建具や布製のスクリーンを通して、1階全体に防犯・プライバシーを守りながら心地よい自然光と空気を巡らせる設計としました。
 2階は、ご夫妻の作業や奥様の縫い物・ミシン掛け、お子様の仕事に対応する多目的な空間として設計されました。壁面に沿って設けたデスクは、作業内容や使う人の身長・体勢に合わせて高さをフレキシブルに変更できるよう、木製ブロックによる高さ調整機構が組み込まれています。

ガラリを備えた木製サッシ
雨の庭も雰囲気たっぷり
左右どちらも手すりのある階段

経年変化を楽しむ空間

2階和室は、屋上の庭という自然に、ベンチを通して階段室から家族につながる

 素材選びには、木材会社に勤務している息子さんの知見を活かし、床材には足触りが良く耐久性に優れたホワイトオーク複合フローリングを採用。艶消しウレタン塗装で木の質感を引き立てました。仕切りとなる壁やキッチンなどの造作家具、ベンチなどふんだんに木の素地の美しさ、楽しさを活かした仕上げを両立させました。壁面には調湿・脱臭効果の高い珪藻土を施しています。年月とともに味わい深く表情を変える自然素材が、庭木や菜園の緑と調和し、時を重ねるほどに愛着を増す住まいです。
 佐藤さんの、暮らしに寄り添う緻密な設計。川野邉さんの、自然のままに近い豊かさを感じる庭。S様ご家族が家づくりを楽しむ気持ちが一つに集結した『井の頭の家』暮らしの多様な住まい方に寄り添いながら、これからも世代を超えて豊かな暮らしと物語を紡ぎ続けます。

2階にもトイレを設置
自然光がたっぷり入る踊り場
2階のデッキには
豊かな樹形の緑がたくさん
ベンチに腰をかける佐藤さん
背もたれは少し傾斜がついていて座りやすい
2階の作業室は切妻天井と高さを変えられる壁付けデスク大きなテーブルが特徴。
作家として活躍されているS様ご夫妻が執筆や作業をしたり、娘さんのリモートワークに使うことも

建築概要
木造住宅2階建て
敷地面積:117.39㎡(35.51坪)
延床面積:93.524㎡(28.291坪)
仕様
屋根:ガルバリウム鋼板
外壁:ラスモルタル+アクリル樹脂系コテ仕上げ
床:ホワイトオーク複合フローリング(和室・桧フローリング)
内壁:珪藻土塗り・天井:水性エマルジョン塗装
設備
エアコン・床暖房
設計
佐藤重徳建築設計事務所 佐藤重徳
施工
相羽建設株式会社
担当
監督:渡邉拓也
大工:中山善弘・中山和弘
造園
かわのべ庭園 川野邉喜大
キッチン家具造作
木跡 宮鍋慶
写真・取材・編集
伊藤夕歩・中村桃子

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